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01 キムチの起源
02 キムチの栄養と乳酸発酵
03 ニンニクの原産地と語源
04 唐辛子伝来の歴史
05 ショウガとウコン
06 稲の原産地と日本
07 焼きたてパン信仰
08 エゴマはゴマではありません
09 箸の文化は日本の文化です
10 焼き肉文化と韓国の肉食の歴史
11 日本の食文化・刺身の起源
12 韓国の冷麺スープを考える
13 ジャガイモと馬鈴薯
14 メンマの由来と味付けメンマ
15 宵越しのお茶は体に悪いのか
16 お粥は消化吸収が良くない
17 ごぼうにアクはありません
18 蕎麦の原産地と日本への伝来
19 もつ鍋のコラーゲン
20 砂糖の伝来
21 ドングリは食用になるのか
22 サツマイモの伝来とアグー豚
23 蒟蒻(こんにゃく)の伝来
24 日本の肉食禁止の内実
25 パンとご飯 どちらが痩せる?
26 辛いものは脳に悪いか
27 日本の割り箸の種類
28 冷麺は寒い冬の食べ物だった
29 中国がキムチの起源を主張
30 世界の食用油 食用油の種類
過呼吸の対処と改善(PDF)
実戦操体法研究会
So What
       
英国の東洋史学者ホールデン教授の研究
「キムチのルーツは日本だと分かった」と云う記事がネット上を賑わせたことがありました。
英国人の東洋史学者ホールデン教授(日本・中国の歴史専攻)の研究結果だそうで、現物を読んでいないので確かなことは判りませんが、「キムチに不可欠の唐辛子は、15世紀 にポルトガルから南蛮貿易で日本の長崎にもたらされ、その後、九州で栽培に成功し薬剤として普及していく」とあるそうで、ここまでは大して目新しい研究でも何でもありません。
問題はその後で、「唐辛子を白菜と漬け込んだ食品が、九州の漁師達の保存食として用いられるようになり、漁師や漁民たちの持病である脚気の防止に大変効能があった。16世紀後期になり、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、日本水軍の九州兵が保存食・滋養食として携行し、この戦争において、日本水軍兵の食する元祖キムチが朝鮮兵と朝鮮民衆に伝わり、その保存性・滋養が 注目され、戦闘食として朝鮮軍にも食されるようになった。」と述べているそうです。
文禄の役・釜山城攻略「釜山鎮殉節図」
文禄の役・釜山城攻略「釜山鎮殉節図」
この研究結果は、ロンドンの出版社より刊行され、日本や米国でも出版される予定だそうですが、この教授、白菜が日本に渡来したのが明治以降だとは知らなかったようです。指摘される秀吉の朝鮮出兵の際に、白菜はまだ日本に存在してはいません。
唐辛子が日本から朝鮮半島に伝わり、そこで白菜と出遭い、美味しいキムチが生まれた。それでいいじゃないですかネ。
英語名で Chinese Cabbage と言われる白菜は、その名が示す通り中国北部が栽培種の原産地です。2000年以上前にヨーロッパから中国へと伝わった菜種が、蕪と漬け菜に分化し、更に中国南部原産のチンゲン菜と交雑して誕生したと考えられています。
日本へ明治初期に伝来しましたが、栽培に失敗したようで、本格的に白菜が栽培されるようになったのは、日清、日露戦争の際に種を持ち帰った後だとされています。
キムチに新たな挑戦者が登場した
中央日報 09/07/15
日本産「キムチ」に続き、中国産「ポウツァイ」(泡菜、漬け物という意味で、中国語では一種のキムチと翻訳できる)が、韓国のキムチの牙城に新しい挑戦状をたたき付けた。「中国が本来のキムチの故郷」とし、宗主権まで掲げる構えで、再び議論が広がるものとみられる。
13日付の成都商報は3面にその内容を報じた。同紙は四川の泡菜が記録上、およそ1500年前から作られていたとして、「キムチの元祖」という見方まで示した。同紙は「にもかかわらず世界で、四川の泡菜が、韓国キムチの衝撃波を受けている」と強調した。
四川省商務庁の李維民副庁長は「昨年、四川泡菜の輸出入が280万ドル(約2億6000万円)にのぼったのに対し、韓国のキムチは毎年、年間売上24億ドル以上を維持している。韓国のキムチが販売されている国は約100カ国を上回る」と話した。四川省・農業担当者は「四川省の泡菜を優秀な産業品目に選定、5年間で300億人民元(約4064億円)にのぼる年間生産量を達成する計画だ」とし、メーカーへの支援を明言した。
最近韓国と日本を相次いで訪問した後、帰国した四川省食品発酵工業研究院の陳功副院長は、韓国と日本のキムチ産業が高速に成長できた背景は、食品加工技術の機械化だと分析した。同氏によると、韓国はキムチ市場の将来が明るいと判断した後、生産ラインの拡張と同時に標準化作業に乗り出した。95年には、国際食品規格委員会にキムチの標準案を正式に提出した。01年7月に韓国はキムチの国際食品標準を認められ、貿易の踏み台を作った。
陳功副院長は「四川に、泡菜専用の標準化した野菜原料の大型生産基地を建設するほか、先導的な企業への投資を増やし、関連企業の規模を拡大、グループ化させていくべきだ」と強調した。韓国のキムチに追いつくことを目指す「四川泡菜」は、すでに科学的なデータの分析まで終えた状態だ。
キムチの中に、酸化剤の役割を果たす亜硝酸ナトリウムがたくさん含まれているという俗説について陳功副院長は「亜硝酸ナトリウムは土中に含まれている化合物で、穀物・肉類・野菜類いずれも含めている。キムチはむしろ発効時間が長くなると、亜硝酸ナトリウムが減る。特に四川泡菜の亜硝酸ナトリウム含有率も1kg当たり5mg未満で、国家標準の1kg当たり20mg未満を大きく下回る」と話した。
キムチに関しては敏感に反応する韓国らしい内容です。キムチは元々韓国語でも漬物の総称で、何もニンニクと唐辛子の入った真っ赤な漬物だけを指す言葉では無い筈です。キムチが漬物の総称であれば、上記の四川省商務庁の李維民副庁長の発言は、あながち間違いでもありませんが、特に取り上げる程の内容では無く、チョット過剰反応!被害妄想が過ぎるのでは…
朝鮮でキムチに唐辛子が使われるようになったのは、朝鮮の宗主国であった中国が塩の生産を制限していたからだと云われていますが、実情はやや異なるようで、朝鮮の塩の生産技術が低くかったのが要因で、輸入せざるを得ない状況に陥っていただけのようです。