食の雑学 その6  
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食の雑学 
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01 キムチの起源
02 ニンニクの原産地と語源
03 唐辛子伝来の歴史
04 ショウガとウコン
05 稲の原産地と日本
06 焼きたてパン信仰
07 エゴマはゴマではありません
08 マーガリンに潜む危険性
09 箸の文化は日本の文化です
10 焼き肉文化と韓国の肉食の歴史
11 日本の食文化・刺身の起源と歴史
12 韓国の冷麺スープを考える
13 ジャガイモと馬鈴薯・日本への伝来
14 メンマの由来と味付けメンマの起源
15 なぜ宵越しのお茶は体に悪いのか
16 お粥は消化吸収が良くありません
17 ごぼう(牛蒡)にアクはありません
18 蕎麦の原産地と日本への伝来
19 もつ鍋のコラーゲンに美容効果はない
20 砂糖の伝来
21  ドングリは食用になるのか
22 サツマイモの伝来とアグー豚
23 蒟蒻(こんにゃく)の伝来
食の雑学・補足
 補 足
01 キムチの賞味期限
02 キムチと乳酸発酵
03 唐辛子日本伝来説に異論
03 馬鈴薯とジャガイモは別物!
04 パンとご飯 どちらが痩せる?
05 辛いものは脳に悪いか
06 キムチは日本起源?
07 中国がキムチの起源を主張
08 世界の食用油 食用油の種類
09 冷麺は寒い冬の食べ物だった
10 日本の割り箸の種類
11 日本の肉食禁止の歴史
日本の伝統の色
Traditional Japanese colors 
 
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パンの焼きたて信仰
「パン」の語源は、パンを伝えたポルトガル人の母国語のポルトガル語「pao」に由来すると考えられ、直接日本へ入った外来語(カタカナ語)としては一番古い言葉だと言われています。また「餌を与える」を意味するラテン語の「pasco」が語源だとする説や、パンそのものを意味する「panis」だとも言われています。
今や世界中の人々に愛され、欠くことのできない重要な食料であるパン。そのパンの起源は大変古く、古代メソポタミアにまで遡ることができます。
フランスパン
EyesPic http://vol01.eyes-art.com/0599.html
恐らくパンは小麦の栽培が本格的に始まった頃には、既に作り始められていたと考えられていますが、当時のパンは所謂「薄焼きタイプ」で、生地をこねて灰の中で蒸し焼きにしたり、ナンのようにカマドの内側に貼り付けて焼いただけのものだったようです。
ふっくらとした感じのパンを作り出したのは、紀元前3000年頃の古代エジプト人でした。当時は小麦からできるパンは「神の贈り物」として崇拝していたようです。右サイドバーの画像はパン生地をこねる女性像で、エジプト人は「パンを焼く人々」と呼ばれ、パンをこねるのは主に女性の仕事でした。
しかし、いくら「ふっくら」とした感じに仕上がっても、中世ルネサンス期にイースト菌が発見されまでは、パンは発酵にムラがあり、安定して美味しいパンを焼くのは難しかったようです。
ポンペイのパン屋跡

発見されたポンペイのパン屋跡 因みにパン屋が30軒以上あったそうです
パンがヨーロッパからシルクロードを経てアジアへ伝わり、日本へはポルトガル人により鉄砲と共に伝えられたようです。その当時は渡来した人々と一般人の接触は余り無く、パンもイエズス会の僧が自分たちの為に焼いて食べていただけのようです。ひょっとしたら好奇心旺盛な役人はご相伴にあずかっていたかも知れません。
日本ではアヘン戦争勃発の際、外国軍の侵攻を恐れた徳川幕府が、兵糧としてパンを作らせたのがパン作りの最初だと言われています。
当時の幕府もパンの長所はしっかりと学んでいたようで、その携帯性の良さと保存性の高さは正に兵糧として打って付けだったのです。皆さんもパン屋のウインドに置かれたフランスパンのオブジェを見た方は多いと思います。あのパンは決して特別な焼き方をしたものではありません。もともと水分が少ないのでカビが発生し難いのです。
日本に伝えられて結構な時間が経ち、パンが一般に普及したのは太平洋戦争終結後のことです。
大戦後、日本人の食生活が急速に洋風化し、パンは米に次ぐ主食として定着しました。この陰に当時の進駐軍(アメリカ軍)が大きく関わったのは確かで、アメリカの食糧戦略はこの時すでに日本で静かに実行に移されていったのです。
焼きたてパンの良さは香りだけ!
パンが日本人の生活に溶け込み半世紀以上が経とうとしています。ところが不思議なことに、既にパン食文化は日本に定着した筈なのに、パン屋は未だ「パン文化」の外に位置します。確かに一般消費者の無知にも起因はあるのでしょうが、一番の問題は売る側の「無知」または「利益のみを追求した醜い商魂」です。
問題とするのは最近の「焼きたてのパン信仰」です。自家製造のベーカリーの殆どが「焼きたて」と「焼き立てだから美味しい」をキャッチフレーズに営業しています。そして多くの人が「焼きたて」を求め、パン屋の店頭に列をなします。何故でしょう。
このような状況を見てパン屋は何も感じないのでしょうか。 焼きたてのパンは、炊き上がった直後のご飯と一緒です。炊き上がった直後のご飯には多少芯があります。このご飯を美味しく頂くには、一定時間蒸らす必用があります。また蒸らし終わった後、上下を素早く混ぜ、それから頂くのが正しいご飯の美味しい頂きかたです。
熱いうちに食べれば美味しい(そう感じる?)のは当たり前で、ご飯でも多少出来の悪い米でも炊きたてはそれなりに美味しく頂けます。本当の勝負は冷えてからで、良い米で炊いたご飯は、冷めても美味しく頂けますが、お弁当屋さんのご飯は冷めると「エッ?」と思うほど別物に感じることはよくあります。
アンパン
パンも同じことで、パンから余分な水分が抜けて初めて「美味しいパン」が出来上がります。そこからがパン屋の勝負です。フランス映画の中では、会社帰りに焼きたてのパンを買い求める姿を目にしますが、このパンは翌日の朝食用です。決してその夜に食べるものではありません。
粘土板

メソポタミア出土の粘土板
像

パンをこねる女性像
パンをこねる女性像

アレキサンドリア国立博物館
また更に、「焼きたてのパン」の問題点は、その極端な消化の悪さです。試しに「前日のパン」と「焼きたてのパン」を用意し、夫々を水の入ったコップにちぎって入れて見て下さい。「前日のパン」水の中で大きく広がるのに反し、「焼きたてのパン」は小さく縮んでしまいます。これが消化力がまだ弱い小さなお子さんや消化力の衰えたお年寄りの胃の中で起こるのです。
離乳直後の赤ちゃんや小さなお子さん、病弱なお年寄りがいる方にとっては、これは大変大きな問題です。是非これはご自分で試して下さい。「焼きたてのパン」は消化不良を招きます。「焼けたてのパン」の良さはその「香り」だけです!
怖い麦角菌(ばっかくきん)
白いパンを作るには、ふすまを完全に取り除く必要があります。このふすまを完全に取り除かないと色の黒ずんだ不味いパンになります。この黒ずんだパンを黒パンと呼び貧しい人たちを中心に食べられていました。
しかし、このふすまを完全に取り除いていない粉で作った黒パンには、稀に「麦角病・ばっかく病」を引き起こす「麦角菌」が含まれることがあります。その菌核には「麦角アルカロイド」という毒素が多量に含まれ、多くの人命が失われることがあります。西暦994年にはフランスのアキテーヌ、リムザーン地方を中心に、4万人以上がこの病の犠牲になっています。
17世紀に入ると、この病の主因が解り始め、急速に犠牲者が減少しますが、麦角病そのものが消滅したわけではなく、現在でも飢饉の続くアフリカを中心に、貧しい地域で発生が報告されています。
1926~27年にかけては、ロシアで大規模な麦角病の発生が起こり、1万人以上が罹患、93人が死亡しています。
米は麦角には強く、麦角病の被害報告は存在しませんが、菌そのものは日本にも入り込んでおり、今でもイネ科の雑草を中心に、麦角の姿を見ることができると言われていますが、取敢えず日本は安全だと言えます。
麦角
黒い爪と呼ばれる麦角

●農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チーム  http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/ergo.html

Traditional Japanese colors