SINCE 10 MAR 2008 | |||||||||
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釣り人がウキに求める条件は、その人がどの様な釣りを好むかにもよりますが、共通していることは、餌を目的とする水域に運び、効果的と思える水深付近に留め、魚の摂餌に際しては、それを視覚的変化として伝達する能力と言えます。 特に海釣りでは、風や波浪に対しての安定性や復元能力を重視する人もいれば、遠方からの視認性や前触れアタリへの即応性、豊かな表現力を望む人もいます。摂餌に際しては抵抗が少なく、食い込みが良いのは当然のこととして、更にまた振込みが容易で、糸絡みせず、竿に乗りやすく、潮にも乗りやすいことも重要視されます。 実に多くのことがウキに求められます。これら全ての条件を完璧に満たすことは、「至難の業」と言うよりは「不可能」に近いことと思われます。高い安定性を求めると浮力が増大し、鋭敏な反応が阻害されます。逆に即応性の高い感度を求めると、浮力が減少し安定性が失われる結果となります。相反する多くの要素が複雑に絡み合っているのが「ウキ」の世界です。 ウキの自作派は試行錯誤を重ね、材質、大きさ、形状を工夫しながら、丁寧に丁寧に、心を込めて一本一本作り上げています。このウキが浪間に消し込まれる瞬間に大きな誤解が始まります。この時、大物でも釣り上げれば「このウキは最高!」だと考えてしまっても、なんら不思議はありません。しかし、冷静になって考えてみて下さい。釣れる時は小枝がウキ代わりでもその目的は果たせます。釣果は必ずしも自作したウキでなくても得られた筈で、ましてや「このウキは最高!」だと考えてしまう合理的な理由などどこにも見い出せません。 魚影が濃く、警戒心のない場合は、タックルの適不適に無関係に魚は餌に喰らい付いてきます。祖先が始めたころの「釣り」は今のように繊細ではなかった筈です。ウキに大きな浮力があろうと無かろうと、魚は問題なく釣れたことでしょう。各地の海や湖、河川付近の遺跡からの出土品にウキはないので、何とも確かなことは言えませんが、当時の釣り針の加工精度から見ても限界があったと考えたほうが合理的に思えます。 |
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寒江独釣図(中国・南宋時代・13世紀・東京国立博物館蔵)に描かれた小舟で釣りをする人 |
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然しながら、この激しい「思い込みと誤解」が、多種多様なウキを生み出す原動力となっているのも事実で、竿やリール、ライン関係の進歩の著しさに比べ「ウキ釣り」の世界は余り進歩していません。単純な小物だけに恐らく100年前と大差は無い筈です。販売価格帯から考えても、そう多くは望めないのが現実です。大きな変化は、唯一「電気ウキ」の世界だけのような気がします。 当初「電気ウキ」は、単一電池と豆電球を使用する大型で重いものでしたが、現在ではリチウム電池使用の、廉価で小さく軽いものが販売されています。しかし、これはプラスチック素材で量産可能、付加価値が高い製品に他ならないからです。一般のウキのメーカーは、家内工業的なところが多く、最新素材や理論に裏打ちされた製品の生産には不向きです。また一部専業メーカーでも、目先の変わった「抵抗が少ない」ことをうたったウキを販売していますが、「何かの冗談?」と思えるものも数限りなくあります。恐らくはまともに水槽実験すら行なっていないのではと疑いたくなります。 多くの方が釣具店に置かれた円筒形のプラスチック管を利用した水槽をご覧になったことがあると思います。この筒に希望するウキ(オモリを装着)を使い、沈降実験をし、ウキの優劣を判断させるわけです。余りにも意味の無い出鱈目な方法で、科学的というよりもむしろ詐欺的(本人にその意図は無いと思いますが…)ですらあります。この理由は読み進めれば次第に明らかになると思いますので、ここでの説明は省かせて頂きます。 このような環境では釣り人は永遠に「理想のウキ」に辿り着くことができません。つまり「ウキ釣り」の世界は、昔から釣り人の創意工夫と試行錯誤によって発展してきました。「ウキ」は釣りの世界に残された数少ない自作可能なアイテムなのです。 |
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● 左は最近の電気ウキで小さく明るくなっています 右は傷だらけの自作ウキで赤が内湾用で先端にケミホタル25mmが装着可能です 黄色は高い釣り場から使用する目的で製作したもので感度を殺し視認性を優先させましたが 「失敗作」 です |
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Traditional Japanese colors |
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