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ウキの理想的な形状についての考察
ウキを科学する 序章
流体力学と水力学 その1
流体力学と水力学 その2
既存のウキを考える
水槽実験での考察と検証 その1
水槽実験での考察と検証 その2
水槽実験での考察と検証 その3
水槽実験での考察と検証 その4
理想的な形状を持つウキの製作 その1
理想的な形状を持つウキの製作 その2
最終章 イナバウキの数々
ウキの色と視認性
ウキの感度と浮力の関係
 
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ストリーミング放送を保存するには
第二章 既存のウキを考える
阿波ウキのドングリ型とシズク型
大きな間違い勘違い
徳島県はご存知の通り、桐下駄の産地として有名で、この桐の端材を使って製作したものが、磯釣り用の玉ウキ(阿波ウキ)です。当時の「町興し」だったのでしょうか。この玉ウキが昭和43年頃に現在の円錐ウキの原型として完成しました。(【図-11】)今を去ること60年以上も前のことです。.
【図-11】 左がドングリ型 右がシズク型

円錐ウキ ドングリ型とシズク型
阿波ウキの内部構造

    【図-12】 阿波ウキの断面 中心を貫く穴が開いており、下部に安定オモリを内蔵する
私がウキの形状を、科学的な視点で解明してみたいと思い立ったのが、この「阿波ウキ」との出遭いでした。阿波ウキには、「ドングリ型」と「シズク型」の二種類があり、同体積で、同表面積の、ただ上下の向きが逆さま、と言うだけの兄弟ウキです。一般には、ドングリ型はアタリがあった場合に、水の抵抗が少なく、喰い込みが良い反面、波浪中ではアタリが捕らえ難いとされて、シズク型は前者に比べ、アタリがあった場合は、水の抵抗が大きく、喰い込みが悪い反面、波浪中では安定性が高いとされています。
初めて釣りの本でこのことを知ったときは、向きが逆なだけで、何故これ程ハッキリした違いが生じるのか不思議でした。この見事な程に相反する性能は、向きが異なることに由来するのか、はたまた未知の何らかの原因によるものなのか、そうであるとしたら、それは如何なる理由によるものなのか、大変に興味が湧き、居ても立ってもいられなくなり、すぐさま釣具屋にとんで行き、大小様々の阿波ウキを買い求めてきました。
ところがどうでしょう、我が家の実験室(風呂場)で幾度検証してみても、一般に言われているような結果は一切出ません。「これは不思議!」と、今度は本屋で何冊かの本を購入し、「阿波ウキ」に関して調べてみましたが、やはりこれも同じで、一般に言われているような内容の記述しか有りません。これは「軽い側に天秤が傾く」ようなもので、有り得ないことと言うより、有ってはならないことなのです。
そこで考えたのは、「阿波ウキ以外でも全く出鱈目が書かれているのではないだろうか」、この疑問が流体力学を勉強し(初歩的な…)ウキの水槽実験と理想的な形状の研究へとのめり込ませる機会となりました。
既存のウキ(寸評)
既存のウキの中には流体力学的には、甚だ疑問と言わざるを得ないものも多々ありますが、未だに使い続けられているのには、それなりの理由も有るようで、それはそれで立派な存在意義があります。
問題なのは「敏感」「抵抗が少ない」等の表現を使い、全く逆の効果しか得られないものでしょう。己の経験と感性だけで良いものを作り出すことは非常に困難な作業と言えます。多くの時間を費やし、確かな目的と方法、それを裏付ける科学的根拠、正しいものを見抜く目を鍛える必要があります。
文中の≪≫内は、山○堂「釣具の使い方百科」○間○次編集・ガ○ド出版社よりの抜粋です。
玉ウキ    脚付き玉ウキ
【図-13】 普通の玉ウキ           【図-14】 足付き玉ウキ

玉ウキ【図-13】:その名の通り球体状のウキで、中央に本体を貫く糸を通す穴が開いています。このことにより「遊動式」にも「固定式」にもなります。阿波ウキの原型もこの玉ウキです。現在では滅多に見かけませんが、まだ大型のものが販売されているところをみると、使っている人がいるのでしょう。
足付玉ウキ【図-14】:玉ウキに足を付け、その足にゴム管を装着し、ラインを固定しすると共に、容易に固定位置を移動できるよう工夫された改良版です。防波堤などで子供や初心者が使っているのを良く見かけますが、これは初心者用の廉いセット商品に、最初からこのウキが入っているからだと思われます。ハゼ釣りにはこれで充分です。粘性抵抗が高く、かなりの部分が水面上にあるので、大きさのわりには浮力が大きく、アタリがあると水面に波紋ができます。視覚的にアタリがとり易い利点はありますが、できるだけ小さめのものを使うことと、警戒心が無い魚が対象と言うのが大前提となります。≪これを逆付けしたものは合わせの時に抵抗が少なく糸の絡みも少ない≫とされています。
⇒ 玉ウキに足を付けただけの球体ウキですので、逆付けにしても、引き込まれる際に形状が変化する訳ではないので、抵抗が軽減する理由など、どこにも有りません。逆に、足が引き込まれる際には、体積が増加し、表面の状態が滑らかでは無くなるので、抵抗は必ず増加します。また足を上にするには、足が水面上に出なければなりません。そのような状態にセットするのは不可能かと思われます。唯一可能だとすると、足が水面上に横になる状態、つまり「寝ウキ」として使用する時だけです。寝ウキとしてであれば、初心者が波紋で判断するより、頭部の赤が回転しながら引き込まれるので、ウキの動きさえ見ていれば、容易に判断がつきます。然しながら、抵抗値が軽減するようなことは絶対に有りません。
各種シモリ玉    ちょこウキ
図-15】 シモリ玉                  【図-16 】ちょこウキ

シモリウキ【図-15】:玉ウキの小型版で、ウキ下のラインを潮に乗せ易くしたり、オモリの微調整に用いたりと、使い方は人それぞれですが、沈めて使うことが多く、一種の水中ウキとも言え、「シモリ」の語源ともなっています。図のように2種類の形と、さまざま大きさのものが有ります。
⇒ これも小さいからと多数使用すると、粘性抵抗の高い球状ウキですので、決して良い結果は得られません。使用は最小限に留めるべきです。私は5〜6mm程度の小さいものを、ウキ止めを使わず完全遊動で、小物の底釣り用の目印代わりにしたりします。
ちょこウキ【図-16】中が空洞な丁度おちょこ(バケツ?)を伏せたような形のウキです。誰がこんな馬鹿なものを考えたのでしょう。冗談で作ったとしか思えないウキです。≪中が空洞なので大きさの割には抵抗が無くアタリに敏感≫と有ります。まったく解説まで悪い冗談です。
下の【図-18】は片側が開口している半球の抵抗係数を示したもので、円柱では有りませんが、数値を見て頂ければ如何にこの「ちょこウキ」が馬鹿げたものか理解頂けると思います。
⇒ 底の無い半球の抵抗係数は、流れの方向に開口している場合、流れの後方に開口しているものに比べ、遥かに高い数値を示し、その値は何と3.91倍にもなります。これは流れの方向に直角に置けれた円板の1.2倍高い数値になります。水面に円板を浮かべてウキ代わりに使う人は、恐らくいないでしょう。全く訳の解らないウキです。
三次元物体の形状 備 考 基準面積S
1/2ρv
底無しの半球
A 凸型空洞
B 凹型空洞
πd2
4
A  CD=0.34
B 
CD=1.33
流れの方向に
直角の円板
πd2
4
1.2
図-18】 2種類の底無し半球と円板の抵抗係数

唐辛子ウキ【図-19】:唐辛子のように細く、両端が尖った形状で、下側に足が付きます。足にゴム管をさして糸を固定します。主に緩やかな流れの河川、または湖沼で利用され、多くの人々に愛されて続けている定番のウキです。≪水中にある部分がなだらかに膨らんでいるので、浮力があり安定性もある≫とされています。
⇒ 棒ウキ【図-21】の改良版とも言えます。本体中央を滑らかな曲線で膨らませてあり、水面に露出する部分も大きく、浮力もかなり有ります。浮力がかなり有ると言うことは、即ち粘性抵抗も高いと言うことです。また、浮力は「アルキメデスの原理」によってのみ決定される事項です。≪≫内の浮力と安定性に関しては全く納得できません。いずれにしても、波浪中での安定性や視認性はそう高くありません。(第1章参照)
ケン付き唐辛子ウキ【図-20】:唐辛子ウキにトップを取り付け、視認性の改善を目論んだタイプです。恐らく海での使用を考え、視認性を改善したものと思われます。
⇒所詮は唐辛子ウキが原型ですので、性能的には大きな期待はできません、水面上に露出した部分が多く、さらにケン付きのトップが加わることで、風の影響をより多く受け、波浪中での安定性は唐辛子ウキよりも劣ります。本体を水面下に沈め、トップのみを露出させれば、安定性の向上が多少望める筈ですが、視認性は低下します。
唐辛子ウキ ケン付き唐辛子ウキ 棒ウキ
   【図-19・20・21】 左から唐辛子ウキ ケン付き唐辛子ウキ 棒ウキ

コマ型ウキ【図-22】:見ての通り、コマ(独楽)そのものです。恐らくこれも冗談の一種と思われます。≪アタリは玉ウキに似ている≫とありますが当然のことです。図のような形状では、境界層の剥離が極端な形で現れます。沈降性能は玉ウキに比べ更に低下します。
⇒≪アタリは玉ウキに似ている≫のは当然で、粘性抵抗も半端ではありません。をウキの周りにできる波紋でアタリを判断するのは玉ウキと同じで、粘性抵抗の高いウキ独特のものと言えます。プールでの飛込競技と同じで、上手な人は飛沫が少なく、下手な人ほど多いものです。
コマウキ ダルマウキ スイコミウキ
【図-22・23・24】 左からコマ型ウキ ダルマウキ スイコミウキ

ダルマウキ【図-23】:磯釣りに使用されるウキで、唐辛子ウキの肥満型です。胴が太く、トップも極端に太くまるで電気ウキのようです。水面上に露出する部分が大きく、結果浮力も極めて大きくなっています。
⇒高浮力のみが売り物で、唐辛子ウキの波浪中での安定性の低さを、重たいオモリと高浮力で補っただけで「鋭敏」とは無縁の代物。
スイコミウキ【図-24】:ダルマウキの先端に大きな玉を取り付け、波浪中での視認性向上を図ったウキです。本体下部を先細りにしたものは≪先のほうを細くして小さいアタリもとりやすくしている≫とあります。
⇒トップ頂点に丸い玉を付けた形状は、波浪中での視認性向上には寄与するでしょが、風の抵抗も強く受けますし、安定性も大きく殺がれてしまいます。
≪先のほうを細くして小さいアタリもとりやすくしている≫は全く解せません。先を細く長くすれば、悪戯に体積を増加させます。流体中での粘性摩擦の多くの部分は、進行方向の後部に発生する渦流によります。幾ら先を細くしても抵抗の軽減効果は期待できません。ましてや太いトップとそれに続く大きな玉は、沈降時の境界層剥離をより複雑にします。スイコミ型の名の由来は、先を細くしたので「吸い込まれるように…」と考えたのでしょう。
ウキの粘性抵抗は、釘を板に打ち付ける際の抵抗とは違います。釘は先が細ければ細いほど、単位面積あたりの圧力が高まり、強い力で打ち込まれます。抵抗のメカニズムが全く異なります。正に改悪版と言えます。

サギウキ【図-25】:スイコミ型の風に対しての改良版だそうです。単にスイコミ型からトップを除き、玉を直接本体に接続し、全体の高さを低くしてあります。
⇒背が低くなっただけ風の影響は減りますが、気休め程度のことしか期待できません。正にサギウキです。
サギウキ アンドンウキ 阿波ウキ
【図-25・26】  左からサギウキ アンドンウキ 阿波ウキ

アンドンウキ【図-26】:棒ウキの下半身肥大型で、滑らかな曲線で膨らませたのではなく、串に刺さしたフランクフトソーセージのようです。つまり棒ウキの2段ロケットのような形です。この仲間にカッツケウキがありますが、≪膨らんだウキに比べると浮力は小さく不安定で、風に弱いと言う点があるが、これは感度がよく、こまかいアタリもわかりやすい≫、また≪逆テーパーのものはアタリがわかりやすい≫とされています。
⇒棒ウキ同様に、流れの中では安定性が損なわれフラフラします。流れに対しては高い粘性抵抗が発生し、大きな影響を受けると共に、沈降時には円柱状の本体では、境界層の剥離が進行方向のかなり前部分で発生し、大きな粘性摩擦が発生します。
更に「浮力」はアルキメデスの原理によってのみ決定されます。その形状が膨らんでいようが、凹んでいようが、一切「浮力」には関係ありません。安定・不安定もまた「浮力」とは関係ありません。これは第1章で述べたとおり「浮力の中心とメタセンタ」により初めて決定されます。≪感度がよくこまかいアタリもわかりやすい≫は絶対にありません。恐らくは不安定でフラフラしている様を勘違いしているものと思えます。

≪逆テーパーのものは…≫に関しても何の根拠もありません。これは第3章の実験結果に詳しく書きたいと思いますので、ここでは省略します。
阿波ウキ【図-11】:桐の玉ウキが原型で、ドングリ型とシズク型の2種類有り、大きさのわりには重みがあり、また安定オモリを内蔵することで飛距離がでます。ドングリ型は≪ウキが引かれたとき水の抵抗が少なく、喰いこみが良いという利点がある≫、またシズク型は≪ドングリ型よりウキが引かれたとき水の抵抗が大きく、食いこみが悪いが、安定性が良く、横からの水の影響をうけにくいので、波の強いところでもアタリをつかみやすいという利点がある≫と解説されています。
⇒ある点は正しく、ある点では間違っています。これも第3章の実験を通して詳しく見て行きたいと思います。
メジナウキ ダルマウキ 田辺ウキ
酢-27】 メジナ釣りによく使われることが多いウキ    【図-28】 ダルマウキ    【図-29】 田辺ウキ

メジナ(グレ)ウキ【図-27】:メジナ専用のウキと言うものは特にはありません、しかし、メジナ釣りに良く使用されるウキはあります。メジナは基本的にはサラシを釣ることが多く、また高い釣り座からの釣りが多いので、上からの視認性が高いものが求められる傾向にあります。一般にはサラシに強く、浮力があり、波浪中での安定性が高いものが好まれます。
⇒実際にはサラシに強いと言うより、高浮力のものが多く、長い胴とトップを持つものも多いようです。長い胴は同一の胴回りなら、全長を長く伸ばせば容易に体積を増加させ、浮力を高めることが可能です。然しながら、長く太い胴は粘性抵抗が増加します。また高浮力になりますので、安定させる為には重いオモリが必要になります。結果として敏感な即応性を欠くことになりますし、本体からトップにかけての線は、境界層の剥離に拍車をかけるような形状をしています。当然のこと、強い渦流が発生し、抵抗が高くなります。長いトップはサラシに乗せて遠くへ流した際の、横からの視認性を考慮した為と思われます。
ダルマウキ【図-28】:赤い毛糸の帽子をかぶった雪ダルマのようなウキです。水面上に露出する部分が大きく、上からの視認性が高いので、メジナ釣りに使用されることが多い(?)らしいのですが、見たことはありません。
⇒玉ウキを2段重ねに太いトップを取り付けたウキで、引き込まれる際の抵抗は半端ではありません。また波浪中での安定も低く、うずが複雑に絡み合うサラシでの使用には不向きです。
田辺ウキ【図-29】:ウキ本体に、取り外し可能なトップを装着し、またこのトップを本体内に挿入することにより、重心の移動を可能にした「アイデアウキ」です。本来メジナ用に開発されたウキですので、トップの頭部に20mm程度のセル玉、または木製の玉を装着し、視認性を高めて使用します。全長50cm〜70cmもある大変大きなウキです。
⇒重心を移動できることは大変に優れた発想で、マジナ釣りに詳しい釣り人の開発と思えます。しかし、基本が棒ウキですので、粘性摩擦が大きく、他の長いトップを持つメジナウキ同様に、本体からトップにかけての線が大きな抵抗を生み出す結果となります。これだけ大きいと、トップに装着した玉が受ける風の影響は無視できる程度でしょう。

カッパウキ 熱海ウキ 遠矢ウキ
【図-30】 カッパウキ       【図-31】 熱海ウキ       【図-32】 遠矢ウキ

カッパウキ【図-30】:クロダイ用の棒ウキで、トップを装着した田辺ウキと大変良く似ています。胴は若干細めで、トップにかけての線も鋭角になっています。またトップは上に行くに従い細くなっています。≪外洋に面した風波のあるところでは、風や波に強いオモリ入りの…≫と波浪中での安定性が強調されています。
⇒これも基本的には棒ウキですので、横からの水流の影響を大きく受け、安定性は決して高くありません。田辺ウキと大変良く似た形状ですので、抱える問題点も全く同じです。またオモリが入っていることと、安定性とは基本的に異なる次元の話しです。安定を増す為に重いオモリを装着すれば、自ずとその体積が増加します。それに従い粘性抵抗も大幅に増加します。「百害あって一利無し」です。他の方法で安定性は図られるべきです。(安定性は浮力の中心とメタセンタにより決定されます)
熱海ウキ【図-31】:如何にも鈍重そうなウキです。もともとカゴ釣り用のウキですので、鋭敏さや優れた運動能力とは無縁です。求められているのは大きな浮力と、遠方からの視認性だけです。
遠矢ウキ【図-32】:クロダイ釣りに使われる代表的なウキの一つで、ヘラ用のウキを流用したものです。自立タイプで本体下部にオモリを内蔵しています。当初は長いトップが折れる事故が多発しましたが、現在では付け根からトップが曲がり、折れる事故を回避できるように改良されています。≪着水と同時に自立して波と同調して安定がよく、アタリかどうかを瞬時に判断することができる≫、また≪ヘラウキに要求される感度のよさを海釣りにもと考えだされたウキであるから、敏感で、かつ遠くからも見やすいヘラウキを思わせる細長い形をしている。そのために水や空気の抵抗がきわめて少なく、よく飛び、着水音も少なく、喰いこみがよく、見やすいトップで…≫と解説の中では手放しに賞賛されています。
⇒細長い胴を持つ棒ウキの仲間で、特に極端に長い胴は横からの水流をモロに受け、安定性が損なわれる恐れがあります。本来ヘラウキは止水か、流れがあっても極端に緩い釣り場で使用されます。複雑な渦流や波風を想定していないウキで、海での使用には問題が多々あります。
≪ヘラウキに要求される感度のよさを海釣りにもと…≫とありますが、所詮は棒ウキです。なだらかな曲線で構成された胴で、トップにかけての線もなだらかで言うことがありませんが、細長い本体は、粘性に基づく流体摩擦の影響をより強く受けます。棒を強く握って引き抜いてみればこの事をよく理解できます。長い棒は短い棒に比べ遥かに手のひらが熱くなります。この熱が流体摩擦です。
つまり細長いだけでは抵抗値が下がらないのです。また≪着水と同時に自立して波と同調して安定が…≫とありますが、全くおかしな話です。着水と同時に自立すると言うことは、着水してから深く沈降しないと言うことで、これは抵抗係数が高いことの証でしかありません。抵抗係数の小さいウキは、着水と同時に深く沈降し、着水音も小さく、水飛沫(しぶき)もあげません。つまり記述には?の部分が多すぎます。更に、波に同調しない浮揚体などありません。

京葉立ちウキ   ミネウキ
【図-33】 京葉立ちウキ        【図-34】 ミネウキ

京葉立ちウキ【図-33】:メジナ用のウキで、カッパウキに大変良く似た形状で、≪ボディー部分を円錐状にし、下部に2号ぐらいのオモリを内蔵した…安定がよく、潮にのりやすく、またボディー上部は水面に出ているので円錐ウキの上部のように見やすい。その上に…アタリをつかみやすい…感度もよく、微妙なアタリをキャッチできる…≫とあります。
⇒本体からトップにかけては、カッパウキ同様に境界層剥離の影響が強く出る形状と言えます。鋭角な部分を持つ形状では、何度も記したとおり境界層剥離の影響が極端に現れてしまいます。また本体が心持ち膨らましてあり、これを≪ボディー部分を円錐状にし…≫と解説され、あたかも形状に手を加えたたことが「功を奏した」かのような書き方をしていますが、境界層の剥離が解決された訳ではなく、何の意味も持ちません。
≪ボディー上部が水面に出ているので円錐ウキの上部のように見やすい…≫とあります。この形状で上部が水面に露出すれば、視認性が高まるのは当たり前で、問題にしなければならないのは、視認性を向上させたが為に、失われた運動性能です。≪感度もよく、微妙な当たりもキャッチできる≫に至っては…

ミネウキ【図-34】:京葉立ちウキを痩せさせたのがこのウキで、≪…安定性もあり、しかもウキが水中に抵抗無なく引きこまれやすく、魚にウキを感じさせないボディーラインをもったウキがミネウキである≫とあります。
⇒このウキは京葉立ちウキの胴を細くし、テーパーを絞っただけのものです。この形状では境界層剥離の影響をより一層強く受けます。
≪…ウキが抵抗なく引きこまれやすく、魚にウキを感じさせないボディーライン…≫とありますが、そのような都合の良いことは起こり得ません。アタリの際に発生する波紋を「鋭敏」であると勘違いしているようです。波紋はどのウキにでもできます。ただし、それが視認され易い形で現れるとすると、玉ウキ同様に沈降時の粘性抵抗が高く、且つ境界層の剥離が強く出ると言う査証に他なりません。

ウキの種類は大変多く、それこそ数限りなくあり、釣り人それぞれが好みのウキを必ず一つや二つは持っている筈です。幾つかの代表的なウキを見てきましたが、どれも「鋭敏」には程遠いのには驚かされます。
これは考案した当初に「実験科学的手法」が用いられなかったことが大きな原因かと思われます。正しい考え方と方法がなければ、当然のこと正しい答えは得られません。
次章(第3章)では、水槽実験を通し理想的な形状を考察、検証して行きたいと思います。実験データには既に消失してしまったものが多く、可能な限り再構築できるよう資料を整理しましたが、もともと250ページ以上にわたるものなので、完全な形での復元は不可能だと諦めています。取敢えず何とか読める形に纏めてみました。

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