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第3章その1〜4で記した通り、円錐験体のシズク型は、ドングリ型と比較すると遥かに高い運動性能を持つことが検証できました。特に比率1:4.5は、ずば抜けた運動特性を示します。面白いことにこのシズク型験体は、ある高度から自由落下させ水面まで浮上する時間と、離底実験で水面まで浮上するのに要する時間がほぼ同じになります。 またその沈降能力はドングリ型を遥かに凌駕し、逆に浮上能力はそれほどでも無い筈であるにも拘わらず、総合的に優れた結果を残せると言う優等生ぶりを見せました。どれも実験をして始めて判る事柄ばかりです。結果が示すとおり、最もウキに適した三次元物体であるとも言えます。 しかし、ここで示された数々のデータは、比率1]4.5の験体のそれであって、現実のウキのものではありません。現実のウキとして完成させるには、まだまだ多くの課題が残されています。第4章では如何に示されたデータを基に、想的な形状を持つウキの製作を行なうかに関して記したいと思います。 注意:ここで問題発生です。書き進めているうちに数式の誤りが判明しました。大きな誤差ではありませんが、指摘される前に誤りを明らかにしておきます。 【図-71】は比率1:4.5の験体の各数値ですが、実際にこの通り験体の製作を進めると、僅かながら球体の一部を円錐がカットします。その結果半球と円錐の接続部に滑らかではない面が現出してしまいます。薄い●がその部分ですが、まア小さい(?)問題ですので勘弁して下さい。今さら再計算が面倒なもので… |
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比率 1:4.5 のウキに最適と思われる形状 fVは前部 rVは後部の体積 fSは前部 rSは後部の表面積
【図-71】 理想的な運動性能を示した比率1:4.5の験体と各数値 |
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運動性能、視認性、安定性、復元性の四つは、ウキには欠かせない要素です。一連の実験を通しこの殆どが解明、もしくは重要な示唆を得られたかと思います。 運動性能ではシズク型の比率1:4.5が最も高いことが証明されています。残りの視認性、安定性、復元性の三つをこのシズク型に取り込んでゆけば自ずと理想的なウキの原型に辿り着ける筈です。 |
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@【バルサ材】 最初に用意するものは、本体を構成する部材の比重0.17の高級バルサ材です。バルサはある程度の厚みと均一な木目のものが必要なので、充分吟味して購入して下さい。大型の模型店で手に入ると思います。 A【塗料】 塗装にの下地に硬い皮膜を作れるラッカー系の透明塗料と、着色用のこれもラッカー系のものとを用意します。上塗りには2液混合のウレタン塗料を使います。下地に透明のラッカーを用意するのはウレタン塗装が苦手な人はこの透明ラッカーで仕上げれば良いからです。 B【ヤスリ】 細かいものから粗いものまで最低4種類のサンドペーパーが必要です。粗いものと中位のものは本体を形作る際に多用します。細かいものは仕上げ直前に使い、極々細かいものは仕上げに使用します。バルサは硬い部分と柔らかい部分とが層をなしていますので、無理な作業ができず、丁寧にサンドペーパーで整えて行く以外に方法がありません。また塗装後の塗装面の凹凸の修正には極々細かいものが必要になります。サンドペーパーは紙製のものより布製のものが耐久性もありながく使えます。 C【ナイフ】 カッターナイフ、これは大切です。バルサ材は何度も記したとおり、硬い部分と柔らかい部分が層を成しているので、砥石で刃先をなでるようなもので、たちまち刃先が鈍ってきます。こうなると、バルサめくれ易くなり、ササクレができてしまいます。また安全面を考慮し、是非幅広のものを使用して下さい。カッター以外の刃の厚いものは、この作業には向いていませんので注意して下さい。 D【瞬間接着剤】 液体タイプとゼリータイプの2種類を用意します。バルサ材は吸収性が高く、通常の作業にはゼリータイプを使用し、部分的な補強に液体タイプを浸透させて使用します。 E【カーボンの丸棒】 これが一番厄介です。カーボンはご存知のように非常に軽くて硬い素材ですが、普通は生活に必要としないので、余り見かけることはありません。私は東急ハンズ池袋店(03-3980-6111)の素材売場で見つけて購入していました。用意したものは直径1mm・2mm・3mmの3タイプで、共に長さは1mです。これを書き始めた頃は、なかなか入荷せず困りましたが、入荷する度に買占め、未だに使い切れずに置いてあります。 カーボンが用意できない人は竹ヒゴで済ませることも可ですが、破損し易いので余りお勧めはできません。またグラスウールの丸棒なら比較的簡単に手に入りますが、これはかなり重いので論外、妥協してプラスチックですが、柔らか過ぎて、曲がった時に本体との接続部分(【図-76】のあたり)を破損させる危険があります。 F【タル型オモリ】 オモリは浮力に合わせて何種類か必要になります。どうせ使うのですから0.5〜6.0号位まで揃えておきたいものです。 G【ノギス】 あれば便利ですが、無くても何とかなります。工夫して精度を出して下さい。 H【その他】 まさしく必要になるその他のものです。特にバルサを粉(削りカス)が飛ぶので掃除機と濡れ雑巾は必需品です。 |
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【図-72】 作成目的の比率1:4.5のイナバウキ 【図-73】 バルサのカットと張り合わせ |
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最初の作業は購入したバルサ材を寸法(少し大きめに)に切断し、【図-73・74】のように2枚を貼り合わせて使用します。貼り合わせないで済むような太い角材を購入すると、正確に中心を貫く穴を穿つことは困難ですので注意して下さい。 事前に貼り合わせる部材には、図のようなカーボンの丸棒を通す溝を設け、液状タイプの瞬間接着剤で丸棒を固定します。2枚の部材はゼリータイプを使用し、重しを乗せて強固に接着して下さい。この作業を怠ると、後々ウキ本体に亀裂を生じさせる結果となります。私は接着したものの上からゴムバンドで固定していました。輪ゴムでも問題ありません。 中心を貫くカーボンの丸棒は、下部にオモリを装着する、しない、を別として、必ずある程度の長さは確保して下さい。これは「浮力の中心とメタセンタ」で述べた通り、復元性と安定性とに大幅に寄与し、弱点を補い且つ性能を大幅に伸ばすことが可能な一石二鳥の解決策になります。長いトップを持つことにより波浪中での視認性も向上し、長い足は復元性能を飛躍的に改善します。 |
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【図-74】 |
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次にカッターナイフで大まかに切り出して行くのですが、その前に【図-73】にあるように、目的とする比率の型紙を宛がい、サインペンで凡その形を写し、作業が進め易いようにします。側面も同じようにしてから切り出します。 丸く切り出す作業は角から始め、徐々に丸みをつけて行きます。同様に側面も【図-75】のようにカッターナイフで大まかに切り出して行きます。切り出す際はも木目に充分注意して下さい。木目に逆らって刃をあてると喰い込み易く、削り過ぎてしまうことが有ります。修正は丸棒を軸に回転させながら粗いサンドペ^パーで行ないます。 削りすぎは一からやり直しになりますので慎重に作業を進めて下さい。また丸棒が本体から突き出る【図-76】のような箇所は液体タイプの接着剤を浸透させ、入念に補強を施して下さい。この部分が損傷すると、目的の比率が確保できず、全長を短くするか細く作り直す以外方法がなくなります。 |
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【図-75】 側面の切り出し 【図-76】 接続部分の補強 |
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サンドペーパーでの修正は粗いので始め、徐々に細かいものに変えて行きます。粗いものだけで修正すると、ノギスで測っても正確な数値を得られません。最終的な修正は、バルサの表面にケバ立ちが無くなり、光沢を帯びてくる状態です。この時点で目的とする寸法が得られればOKで、次に塗装段階に移ります。 塗装は好みもありますが、私はトップから本体へかけて同色の蛍光オレンジで統一しています。これは水面下の本体も視認できるようにしている為です。蛍光色を使用するには前述の塗料だけでは足りず、下塗りした上に更に白を重ねる必要があります。白を塗らないと蛍光塗料が発色しません。美しく仕上げるには、各塗装面共にその都度細かいサンドペーパーで表面を整える作業を何度か行なう必要があります。各塗装面をこうして仕上げると完成時に表面が鏡のように光輝くことになります。最終仕上げのウレタン塗料のガラス化で、この美しさは一層際立ちます。 本体重量の増加を気にする方は、トップのみの塗装で良いでしょう。実際に小物用のウキには本体塗装をしません。ある程度大型のものは、全体の重量に対して塗装の占める割合が小さいことで塗装を施しています。本体下部はカーボン剥き出しの状態で塗装はしません。これは塗装によりこの部分の体積が増加する為です。 足の体積が及ぼす影響を極力軽減するのに【図-77】のような工夫を施したものも開発しました。これはカーボンが中心を貫く方式ではなく、補強の為の塩ビパイプを通して本体を補強し、下部の足のみをステンレス線を使用して作ります。下部の横からの流れに対する抵抗が大幅に減ると共に、浮力の中心が上部に移動する為に、波浪中での安定性が格段と向上します。ただ製作が面倒なことと、構造が複雑になり、その分耐久性が劣ります。これはバルサ材を使用していることに起因します。他の素材を使用した場合はベストな選択となります。 通常の塗装を施したものが【図-72】です。この方式は構造がいたって簡単なので、本体が破損しても何度も作り換えるが可能です。カーボンは大変頑丈な素材ですので、まずこれが破損することは考えられません。 |
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● バルサを効果的に強化する塗料に関してはルアー関係のサイトが詳しい → http://www.raiga.jp/raiga.jp/goodsinfo1.htm | |||||||||
【図-77】 ステンレス線を用いた際の下部構造 |
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【図-78】 夜間用にケミホタルを装着できるように加工したトップ 【図-79】 サルカンとナツメ型オモリを使った安定オモリを装着した自立タイプ 【図-80】 新素材糸を使用した安定オモリ無しの加工 |
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夜間仕様のトップは2種類製作しました。【図-78】はケミホタルをねじ込んで装着できるよう、トップ先端のアルミパイプ内部を螺旋状加工してあります。この他にリチウム電池使用のバージョンもあります。但しリチウム電池仕様は先端が大きくなる欠点があり、風の影響を受け易くなります。 この長いトップの夜間仕様はなかなかのもので、波の影響で海面に写る光とトップ光との二つの光点が近づいたり離れたりして視認できます。この二つ光点がくっ付いたように見える時がアタリです。その後は通常のウキ同様に海面下がボォーと光ります。遠くまで流す時でも小さなアタリを見逃すことがなく面白い釣りができます。闇夜のクロダイ(チヌ)釣りには抜群の効果があります。 【図-79】は、自立型の下部の安定オモリですが、これはナツメ型オモリの穴を拡げ、カーボンの丸棒が刺さるようし、且つその先にサルカンの片側を取り去ったものを装着しています。サルカンの接着時は気をつけないとサルカン自体に接着剤が流れ込み使えなくなります。出来れば装着する前に片側の穴を塞ぐ工夫をして下さい。またサルカン表面にヤスリをかけて接着効果を上げるようにして下さい。これを確実にやっておかないと、この種のウキの宿命として、岸壁や岩等を直撃した際に、破損してサルカンが抜け落ちることがあります。何度も経験しましたが、丹精込めて作ったものを失うのは実に悲しいものがあります。 【図-80】は、安定オモリを一切装着しない仕様で、新素材糸(船釣り用)で先端に輪を作り固定してあります。固定には液状タイプの瞬間接着剤を使用します。棚が深い場合に使用するタイプです。このタイプを使用する時はミチ糸にオモリを通す遊動式ではなく、サルカン付きオモリを直接ミチ糸とハリスの間に入れて固定して下さい。こうすることでウキ本来の性能を充分に引き出すことが可能になります。遊動方式では直接浮力が大きい状態のウキを引くことになり、魚に違和感を与える危険があります。繊細な釣りは細かいことに神経を配る必要があります。 |
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三宅島の港で |
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Traditional Japanese colors |
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