SINCE 10 MAR 2008 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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打撃装置による瞬間負荷:この実験は、験体の示す即応性と鋭敏性とを観察するのが主な目的で、これを知ることができれば、その験体のもつ慣性運動能力が測れます。実験には第3章その1に示した【図-39】の瞬間負荷装置(打撃装置)を使用します。 ハンマーは水面下1cmで停止します。験体には鉛直のエネルギーが正確に加わるように、慎重に験体の位置を調整しました。ハンマーは木製のものから鉄製のものまで、重量を変えたものを5種類準備し、正確を期する(ハンマーが頂点を打撃しない場合もある)ために、それぞれ10回ずつ試行しこれを記録しました。 ●結果:実験は、@験体頂点が水面下10cmに到達までに要する時間、A験体頂点が水面下30cmに達するまでに要する時間、B沈降限界深度、の3種の結果です。@の実験からは即応性の優劣を判定できます。Aでは初速を含める平均沈降速度から抵抗係数の優劣を判定できます。またBではエネルギー損失の少ない慣性運動能力の優劣を判定できることになります。【図-56】が実験結果です。全ての実験でドングリ型よりシズク型の験体が優れていることが検証できます。 またドングリ型は打撃の瞬間、打撃力が大きければ大きいほど、安定性が損なわれ、一時的にフラ付きます。これは連続負荷実験からも予測できた結果でした。 |
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【図-56】 打撃装置使用の瞬間負荷実験(5回の平均値) |
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自由落下実験と浮上所要時間:この実験は、水面上の特定高度から、験体を自由落下させ、水中への突入後の様子とそこから浮上するまでの所要時間を観察します。水面上の「高度」とは験体のフック下部から水面までの距離とし、「浮上」は験体の頂点が水面上に露出した瞬間を指します。 この実験は実際の釣りの場面で、ウキが投入され「立ち上がる」までの一連の動作が検証できます。連続負荷実験で述べた「…浮力に大きな差がない場合は、ゆっくりとドングリ型が先行しますが、浮力の増大に従って速度が急激に上昇します。この下線の部分はウキの形状を決める際に、大変に重要になってきます。一見ドングリ型が優れているかのような印象を与えますが、あくまでもデータ上のことで、実際のウキに適用するには大きな問題を孕んでいます。」の意味が理解できる筈です。 ●結果:一部を除きシズク型験体がドングリ型験体を完全に凌駕し、ウキの形状としての素性の良さを顕わにします。投入後の沈降速度と単一時間内での到達深度、到達限界深度と水面までの浮上所要時間、共にシズク型が優れています。 ただし、フック下部が水面と同じ高さからの自由落下では、唯一ドングリ型がデータ上は優れています。しかし、これは突入時の抵抗が高く、また落下エネルギーが小さいため、沈降できずに跳ねるように浮き上がるからです。その反面、シズク型験体は小さな落下エネルギーに拘わらず深く沈降します。故に、浮上に移行するまでに時間を要する訳で、シズク型が能力的に劣っていると言うことではありません。 連続負荷実験で「…ドングリ型験体は、沈下能力がシズク型験体より劣るため、沈降方向でのエネルギーを相殺できずにプカプカと跳ねるように…視認性の高さは、その形状が優れていることに由来するのではなく、単に運動能力の低さに由来します…」と書きました。まさにそのことが、この実験でも証明されたことになります。 下の【図-57】はその結果を表した表ですが、60の?マークは、両験体共に着底してしまい計測できませんでした。もっともこれ以上に深くても結果が逆転する要素は皆無ですが…。【図-58】は【図57】の結果を図表化したもので時間経過と運動距離が一目瞭然で理解できるようになっています。これを見ても判るとおり、シズク型験体はドングリ型験体に比較し、慣性運動能力に優れ、同じ落下エネルギーでも、損失が少ないため素早く、深く沈降し、いち早く浮上運動に移行します。一方ドングリ型験体は、エネルギー損失が大きく、自己の限界深度までの到達に多くのエネルギーと時間を費やし、本来は浮上には有利な形状であるにも拘わらず、シズク型験体に惨敗すると言う結果に終わりました。 |
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【図-57】 浮上までの所要時間 単位はcm |
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【図-58】 高度0〜20cmでの自由落下で到達する深度とそこから浮上までの時間差 (グレーの験体は片方が浮上した時点での両験体の差) |
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一連の実験を通し、ドングリ型とシズク型の運動特性が、その形状と進行方向とに由来することが鮮明になったと思います。これは長年に渡り、釣り人が「阿波ウキ」対して抱いていたものを、根本から覆す結果となりました。 これらの実験を通して得られた新事実は、他の既存のウキを観察する上で大きな収穫であり、「繊細で豊かな表現力のあるウキ作り」を目指す上でも、無くてはならない大きな成果と言えます。 全ての面でシズク型がドングリ型を凌駕しましたが、唯一劣る点は波浪中での安定性と視認の問題です。しかしこれも解決し、より高い能力を付与する簡単な方策があります。それは、安定性と視認性は「浮力の中心とメタセンタ」が深くかかわると言うことです。提議された命題を如何に解いて行くかが物作りの醍醐味です。この解決策に関しては後に譲ることしたいと思います。 また、この一連の実験で使用した験体は、同体積で同表面積、浮力も全く同じです。唯一その進行方法(使用方向)が異なるだけです。ところがこれは、【図-45】のような2:1の比率を持つ験体のみでの結果です。異なる比率でも同じ結果が得られるのでしょうか。これは是非とも検証しておかねばならない問題です。流体力学(水力学)は実験で証明して行く実験科学の世界です。 |
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Traditional Japanese colors |
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